「自分を大切にする」とは何か
医療現場で心理カウンセラーをしているクライアントさんと話していたら、こんな話を聞きました。「身体意識が鈍ると、自分を大切にする感覚が鈍るようです」と。皆さんも日々の仕事や対人関係でストレスや悩み事があり、解決したいと思って検索したとき、ある程度進んでいった先に「自分を大切にする」という言葉に出会ったことはないでしょうか?
日々の仕事、対人関係のストレスや悩み事は、たとえば2つの捉え方に分けることができます。
1. 相手にストレスを感じてしまう → 相手(他者・外的要因)を責めたくなる気持ち
2. うまくいかないことで自責の念に囚われる → 自己否定につながる気持ち
人によって傾向はあると思いますが、どちらも思い当たることがあるのではないでしょうか。
今回この話のカギとなるのが、「自分を大切にする」という考え方です。自分を大切にできていると、不思議と両方(他者への不満・自己への否定)とも解消に向かうと言われています。それならぜひ取り入れたいですね。
反対に、自分を大切にできていないと、どちらも悪い連鎖を引き起こし、ストレスモンスター状態を加速度的にムクムクと膨らませてしまうのです。他者への不満が募り、自己否定も膨らんできます。こんな状態、できれば陥りたくありませんよね。
「自分自身に気づく」ことが実は難しい
人は無意識に「自分のことは自分が一番よく知っています」と思っていることが多いです。しかしあなたは「自分が何者なのか?」「自分がやりたいこと、自分が大切にしていることは何なのか?」こういった問いにスルリと答えることはできますか?そもそも、こういった問いを考えることが、日常にはないのかもしれません。
自分の感情に気づかず、五感などの感覚もさておき「頭の中だけで考えること」が当たり前になっていくと、自分というものを無意識に無視していたり、自分が今まさに感じている身体感覚について認識していなかったりする部分が多く見つかってきます。不思議なことですが、実際は自然に発生した自分の感情や考えをそのまま認識するのは意外と難しいのです。
作文が苦手な人がいるように、感情が動くことがあっても、それを感じたとおりに言葉で表現することは難しいですよね。これは認識と言語化が密接に関わっていることが理由にあります。言語化できるものは「認識している」と捉えやすいのです。また、逐一言語化することが高度ですが、日常生活で時々刻々と発生する自分の感情や考えを、常に何かしらの感覚で認識しているか?と言うと、そうではない、認識していない、と理解しやすくなります。
また、加齢に伴い骨密度が下がると、胸椎が圧迫変形し円背になりやすい傾向があります。本来のS字カーブや、クッション性が失われてしまうと、転倒のリスクも高まります。生涯生き生きと過ごしていくためにも、今から背骨のケアを行っていきましょう!
自分のことはよくわからないことが多い
さらに、冒頭に挙げた日々の仕事や対人関係のストレスや悩み事の要因にある「自己否定」は、無意識のうちにクセになってしまい、嫌なことがあっても「そういうものだ」「自分が我慢すればいい」などと、自分で自分を説得しようとしてしまうのです。
物事の判断に、自分の個人的な感情や考えをモノサシにしなくなったり、判断に不要であるため、徐々に自分の感情や考えに目を向けなくなったりします。こうして辛いことや嫌なこと、理不尽なことに対する自分の反応に、徐々に鈍感になっていきます。
ルーティンワークに則った行動を取ることは、脳のリソースを使わなくてすむため、省エネでいられます。鈍感でいることは、感情や考えに振り回されずにすみ、楽に生きられる実用的な方法なのです。
「自分を大切にする」とは、自分の感情や感覚をモノサシにし、違和感や得た共感を、自分で認識する考え方です。つまり、感情や感覚に意識を向ける、新しい思考のベクトルを指します。具体的には「今の自分自身を受け止める」「自分自身の感情を受け入れる」「自分にできないことを受け入れる」などです。
改めて、今の日常でどれだけできているか確認してみましょう。
「鈍い身体感覚」を取り戻す方法は?
この状態を打開する方法が、身体感覚に目を向けることです。前述したように、感情や表面の感覚同様、技術が進化した現代の生活では、身体感覚は意識しない限り鈍くなっていく一方。身体感覚も、意外と自分自身で把握できていないことが多いのです。ヨガをしていると、よりそのことに気づくタイミングに多く出会います。
現代社会では、意識が外に向きすぎています。外に向きすぎている意識を自分の内側に向け「思考=頭で考えること」だけでなく、シンプルに感情や身体感覚に意識を向けていきます。実はこれは、ドラッカースクールのセルフマネジメントクラスのトレーニングで、「感覚」や「感情」を取り戻し、自分の内側の声を聞くための基礎練習として取り入れられているのです。
自分自身をコントロールするには、3つの段階があります。
1. 物理的・身体的
2. 1と3の中間
3. 精神的
最終的には3を叶えたいのですが、これはとても難しいです。一方で1は意識が向けやすく、コントロールしやすいですね。
ヨガやピラティスでは、1の「物理的・身体的コントロール」の段階に意識を向け働かせていくこと、つまり、身体を動かしポーズをとることが当てはまります。まずはポーズを取っていけばよいのです。そして2の「中間」には、意識と無意識の間にある「呼吸」が当てはまります。ヨガやピラティスのポーズや動きがなじんできたら、意識的に呼吸を使っていきましょう。これらの練習を通じて3「精神的コントロール」を叶えていけばよいのです。
このように、自分の感覚や考えに気づき、今ここにある自分(心と身体)を認識すること、つまり身体感覚を磨いていくことが、「自分を大切にすること」の実践になるのです。ヨガが単なる運動やエクササイズではなく心にも良いと言われるのは、ここにも理由があるのです。
クラムるは1日たったの15分。クラムるで自分の身体と呼吸に目を向け、その先にある自分の心に気付く時間を、日々意識的に取り入れていく。そんな習慣を作ってみるのも、現代社会で「自分らしく」豊かに生きるための一つの方法になるのではないでしょうか。