あなたはいま幸せですか?幸せになるためには何が必要だと思いますか?
2020年12月中旬の時点で、日本国内の新型コロナウイルス感染者数の累計が18万人を超えました。1日あたりの感染者数の推移では、第二波と見られる8月から2倍近く増加しています。いまの状況の中、もしかしたら不安を感じている人も多いかもしれません。
私たちが幸せを感じたり何かに対して不安に思ったりするのは、脳の働きによるものです。生物の進化に応じて脳はその構造をアップデートさせてきました。たとえば魚類や両生類では脳幹が脳の大部分を占めています。脳幹は呼吸や血圧を自動的に調整し、摂食や交尾などの本能的な行動を支配しており、生き物が生きていく上で必要不可欠な部分を担っています。
また、私たち霊長類は脳幹部分を覆う形で大きく発達した大脳を併せ持っており、この大脳が高度な認知や行動を可能にしています。社会の中で円滑にコミュニケーションを取りながら生活する上で認知や行動は必要不可欠なものですが、脳のどの部分が優位に働くかでその結果が変わってきます。
WHOが健康を以下のように定義しているように、家族や友人とよい関係でいることや、職場やコミュニティーの中で居心地よく過ごせることは、私たちの生活への満足度に大きく影響を及ぼします。
「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」
幸せは数値化できる?
それでは、より自分が望むような脳の使い方をするにはどうしたらよいのでしょうか。
幸福学について研究されている慶應義塾大学の前野隆司さんが提唱された「幸せの4つの因子」というものがあります。前野さんが提唱された因子は以下4つです。
第1因子「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
第2因子「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
第3因子「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
第4因子「あなたらしく!」因子(独立とマイペースの因子)
もともとロボットの研究をされていた前野さんですが、ロボットに心を持たせる取り組みの中で幸せについて研究するようになり、日本人1,500人に対して行ったWEBアンケートをもとに因子分析という手法を使って上記4つの因子を導き出しました。
私たちはさまざまな要因から幸せを感じますが、特にこの4つの因子は幸せを感じる上で鍵となるようなのです。自分がいまどのくらい幸せだと感じているのか、この因子を使って数値化することができます。4つの因子それぞれに4つの質問が設けられており、7段階で評価をつけます。すべての質問を並べると長くなってしまうのでここでは割愛しますが、4つの因子をそれぞれ見て、どうでしょうか。カギ括弧の中は、あなたがよく唱える言葉ですか?それとも逆でしょうか。
このように数値化・客観化することで、まずは自分自身の思考の癖やパターンに気付くことができ、これからのアクションを自分で考えることができるのです。
瞑想と脳の関係
自分自身を振り返ることともう一つ、よりダイレクトに効果の出るいますぐ始められるトレーニングがあります。それが瞑想です。
fMRI(磁気共鳴機能画像法脳)を用いた計測により、脳活動を調べることができるようになり、瞑想中の脳についてさまざまなことがわかってきました。
海馬は記憶の形成や空間学習能力に関わる器官として有名ですが、強いストレスにさらされ続けると萎縮が起こることがあります。人がストレスを感じるときにコルチゾールというホルモンが分泌され、それにより海馬の神経細胞が傷つけられ、破壊されてしまいます。うつ病患者に見られる症状のひとつとして、物忘れが多くなったりタスク管理能力が落ちたりすることが挙げられますが、これもストレスにさらされ続けた結果です。
コルチゾールの分泌には、脳の比較的古い部位の視床下部が関わっていますが、瞑想を行っているときの脳は、この視床下部の働きが抑えられ、代わりに思考や創造性に関わる前頭前野の部分が活性化しています。つまり、瞑想をすることが結果的にあなたのパフォーマンスを上げ「ありがとう」「やってみよう」「なんとかなる」「私らしく」といった前向きな気持ちを育むことにつながるのです。
日々ニュースを見てみると、コロナ感染拡大以外のことでも問題はなくなることがありません。自然災害や人種差別問題。経済の落ち込み、失業問題。うつ病など精神疾患の増加。年間2万人を超える自殺者数。もともと問題は存在していましたが、どの問題を重大に扱うかは私たち自身が決めています。問題を目の前から魔法のようになくすことはできませんが、自分自身の捉え方、つまり脳、もしくは脳の働きの癖は変えることができます。
あなたの世界はあなたの脳が認識しているものなので、脳が変容するということは世界が変わることと言っても過言ではありません。
オンラインというツールが加わりコミュニケーションのあり方や仕事のやり方が変化しているいま、私たちは今までよりもっと幸せについて考えるべきときにさしかかっているのではないでしょうか。