そもそも私達の身体のどこを体幹というのでしょうか? 体幹とは胴体のことです。四肢(手足)と首を含めた頭を除いた部分を体幹といいます。
例えば、体幹を1本の木に例えると、枝葉や根っこを取ってしまった幹そのものが体幹です。枝葉は手、根っこは足と考えてみると、体幹がどれだけ大事かわかりますね。ピラティスやヨガ、トレーニングの世界では、パワーハウスともいわれたり、シンプルにコアと呼ばれています。ではその体幹にはどんな役割があるのでしょうか。
体幹の役割
① 姿勢の維持
脊柱はS字カーブを描いて重力による荷重のよるストレスを緩和させているのですが、この背骨の前側にドーンと内臓があるわけです。この内臓を保護することは体幹の大きな役割です。姿勢がよい、というのは内臓が正しい位置にあるということです。よって、体幹の筋肉たちが弱ってくると姿勢が崩れる一因になります。
② 動きを支える土台
アウターユニットと言われる体幹の表層にある筋肉は、脊柱や胸郭などの骨組織と連動して、様々な動きを作り出しています。
例えば、身体の前屈や後屈は主に腰椎が、左右へのひねりは主に胸椎が担っていますが、この複雑な動きを支える土台となっているのが体幹です。
③ 運動軸
ピラティスやヨガ、スポーツという身体を動かしているときに、その複雑でありながらもよく動く身体は手や足という四肢のの動きによってもたらされますが、体幹が安定していないと、それらの動きを正確に行うことができません。いわゆる「軸がぶれてしまった」という状態になります。私たちが運動している時、または生活の中でも、動作の再現性を高めることは、一生涯身体をエコに使え、いつまでも若々しくいられる身体を維持するためにとても大事なことです。これらは運動軸を正しく支える体幹をしっかり働かせることのよって達成されます。
または、こんなとらえかたもしてみたいです。
体幹には例えば筋肉だけがあるわけではないです。
肋骨の中には大事な心臓と肺があります。
横隔膜と骨盤底までの空間には脾臓、大腸、小腸、肝臓、胆嚢、腎臓、膀胱、生殖器という内臓があります。
このように体幹には大事な臓器があります。特に、「第二の脳」と言われている腸神経系と腸消化器系は中枢神経を介して消化機能を制御したり、ストレスの反応を調節しています。
つまり腸の状態は感情に影響を及ぼすため、体幹は感情や気分にも結びついているといえます。腸の不調はやがて全身に及んでいきます。そう心の状態にも、です。ヨガ、ピラティスで体幹をしっかり鍛えて、すらっと伸びた姿勢は、心の状態も反映されているわけです。
それでは体幹にはどんな筋肉があるのでしょうか。いろいろな分け方ができますが、ヨガやピラティスを行う時にこんなふうにとらえていくと、自分の身体が見えてきて、感覚もわかってきて、コントロールできるようになります。今世の中で言われている体幹の筋肉というのは、体幹のインナーマッスルのことを指すことが多いです。特にヨガやピラティスではパワーハウス(インナーユニット)から動いていくのが特徴で、とても大切です。後ほど、詳しく説明をします。
①体幹表層筋・・・アウターマッスル
腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋
②体幹深層筋・・・インナーマッスル
横隔膜・骨盤底筋群・腹横筋・多裂筋・大腰筋
またはこんな分け方もできます。身体を前と後ろの分けて、体幹をとらえるとこんな分け方です。
①前部体幹筋・・・アウター&インナー
腹直筋、腹横筋、外腹斜筋、内腹斜筋、大胸筋
②後部体幹筋・・・アウター&インナー
多裂筋、脊柱起立筋、広背筋、僧帽筋
体幹にはたくさんの筋肉がありますが、これらが一つの部位について、一つだけが働くということはありません。
いくつもの筋肉が重なりあい、連動しあって、動きができあがります。
動きとしては、インナーマッスルは身体の安定を作り出しアスターマッスルは動きを作り出します。また、微細の動きをつかさどっているのはインナーマッスルですし、ダイナミックな動きを作り出しているのはアウターマッスルです。
しなやかな動きというのは、インナーマッスルが稼働し始めてからアウターマッスルから四肢の筋肉が動き出すことによって作られます。
例えば、背骨を一つずつ曲げていくような微細でしなやかな動きは多裂筋の働きです。が、一気に身体をそるような動きは脊柱起立筋が主に働きます。外からは見えないインナーマッスルからのたくさんのアクションがあって、効率の良い、正しい動きができるようになります。
体幹を教育することは、四肢の動きをよくします。もう少し具体的に言うと、股関節や肩関節の動きが変わっていくので、エコでいろいろな身体活動ができるようになります。背骨まわりの強化をしていくことが体幹を強くする、良くしていくということです。
パワーハウス・インナーユニットについて
横隔膜・骨盤底筋群・腹横筋・多裂筋を4つを、パワーハウス、またはインナーユニットと言います。
体幹の筋肉は姿勢を維持するのを助けていますが、これはアウターマッスルの働きよりインナーマッスルの持続的な働きが大きいです。
例えば、腹横筋と多裂筋は、骨盤底筋群や横隔膜と協力して腰椎を安定させていますし、6パックの腹直筋は骨盤に対して胸郭を安定させています。
また太陽礼拝やティーザーという力強い動きをするときには、体幹の筋群は共同して力を生みだして動いている部位に伝達するとともに、脊柱を安定させながら、神経、椎間板、関節、靭帯などを保護しています。
これがパワーハウス、インナーユニットです。この二つの名前は同じことを指しています。
家をイメージしてください。横隔膜は屋根、骨盤底筋群は床、腹横筋は壁、多裂筋は大黒柱。
私達の体幹はこのような構造をしています。どれもがつながっています。つまり、どれか一つでもちゃんと機能していないと、家(パワーハウス)はひびが入ったり、傾き始め、しまいには立っていられなくなります。
また、どんなに家の外壁や庭をきれいにしても、この見えない内側の4つのパワーハウスが整っていなければ家はいつか崩れてしまいます。
このパワーハウス=天然のコルセットから四肢や身体の動きがスタートしていきます。
さらに、パワーハウスの中のひとつ、横隔膜は呼吸をつかさどる筋肉ですが、呼吸によってパワーハウスのエネルギーをさらに高めることができます。
体幹にある腹筋群(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)は、呼吸補助筋としても働きます。ですから、腹筋群を弱い人は、呼吸も苦手です。逆を言うと、体幹が強くなるということは呼吸がより良い呼吸になり、血流がよくなり、栄養の状態も促進され、自律神経のバランスもとれて精神の安定も高まります。姿勢も大きく変わっていきます。
この横隔膜は、パワーハウスの中の特に骨盤底筋群を連動して、体幹の安定や身体の伸びを作り出していいます。内側にある天然のコルセットが細く長く伸びていてしなやかであることが重要です。
ヨガやピラティスを行う時には、どんな動きであってもこのパワーハウスの収縮があって、それから動かすべき部位が動きます。
息を吐き、腹横筋の収縮でお腹を薄くしていきながら骨盤底筋群をおへその方向に引き上げます。息を吸うときには横隔膜を横広がりに股関節のほうへ引き下げます。
このパワーハウスの収縮があって動き出すことそのものが、ヨガやピラティスが他の運動を大きく違うところであり、呼吸に意識を向けることでマインドフルな状態になるので、動く瞑想と言われています。